介護現場では、どれだけ気をつけていても予期せぬ「誤嚥」や「窒息」のリスクが常に存在します。
私が夜勤リーダーをしていたある日の夕食後、リビングでテレビを見ていた入居者様が突然、喉を押さえて苦しそうな表情を浮かべました。顔色は見る見るうちに悪くなり、明らかに何かを喉に詰まらせている状態でした。
すぐに背部叩打などを試みましたが、異物はなかなか取れません。救急車を呼びましたが、到着までには時間がかかります。そんな時、施設に導入されていた「掃除機に接続する吸引ノズル」の存在を思い出しました。
【実践】掃除機を使った口腔内吸引
この吸引ノズルは、一般的な掃除機に接続できる特殊なもので、直径13mmの細い管によって強力な吸引力を発揮します。病院の電動吸引器では取りにくいお肉やパンなども吸い取れるよう開発されたものです。
マニュアルに従い、私はノズルを口の中に約5cm入れ、口と鼻を手でふさぎました。そして、掃除機のスイッチを入れました。
ここで一番重要なポイントがあります。
スイッチを入れるのは「約2~3秒」だけ。長く入れすぎると、口内の空気をすべて吸い取ってしまい、利用者様の自発呼吸ができなくなってしまいます。1回で取れなければ、2~3回繰り返すのが鉄則です。
注意点と声かけの重要性
吸引を行う場所は、歯と頬の間、舌の上下と周囲、前歯と唇の間です。
焦ってしまいがちですが、無理に口を開けようとすると、反射的に強く口を閉じてしまったり、チューブを噛まれてしまうことがあります。「大丈夫ですよ、楽になりますよ」と声をかけ、リラックスして筋肉の緊張が緩むのを待つ配慮が必要です。
また、咽頭部後壁(のどの奥)を強く刺激すると嘔吐反射が起きてしまうため、特に食後は注意が必要です。
結果的に、このノズルのおかげで救急隊が到着する前に異物を除去でき、大事に至らずに済みました。「いざという時の備え」と「正しい使用方法の理解」が、命を救うと実感した研修の学びでした。