近年、介護の現場でもICT(情報通信技術)が活用され始めています。ICTを活用することで、介護記録の事務負担を軽減したり、利用者の見守りを効率化したりするメリットがあります。しかし、ICTを導入するにはコストや教育などの課題もあります。今回は、介護事業所のICT活用について、実際の事例を紹介しながら解説します。
介護ICTとは
ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、日本語では「情報通信技術」と呼ばれます。インターネット等の通信を使ってデジタル化された情報をやりとりするコミュニケーション手段、もしくはそのために提供される技術サービスのことをいいます。身近なサービスとしては、SNS・メールでのやり取り、銀行ATMの利用、交通系ICカードの利用などがあり、日常生活に欠かせないものとなっています。
介護におけるICTとは、介護の現場で利用されるICTのことを指します。具体的には、パソコンやタブレットなどの機器や、クラウドサービスなどのソフトウェアがあります。これらを使って、介護記録やケアプランなどの情報を電子化したり、介護事業所や医療機関などと情報を共有したりすることができます。また、利用者の居室にカメラやセンサーなどを設置して、生体情報や身体の動きを感知したり、スタッフに通知したりすることもできます。
介護業界でのICT化が加速している背景は「人材不足」
介護業界でICTの活用が求められるようになってきた背景には、介護の担い手不足の問題があります。厚生労働省によると、2019年度の全国の介護職員数は約211万人でした。しかし、介護職員の必要数は年々増加する見込みで、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人が必要になると予測されています。
介護業界の人材不足が深刻化するなか、多くの人材を採用することはもちろんのこと、介護従事者一人ひとりの生産性を向上させることが求められています。そのためには、ICTを活用して、介護の現場での業務効率化や働きやすさの改善を図ることが重要です。
介護現場のICT導入事例
現在、介護業界で活用されている代表的なICT機器は次の3つに分類できます。
- 利用者情報の共有システム
パソコンやタブレット等のICT機器、クラウドサービス等を使って、文書を電子上で保存します。スタッフは、業務の合間に手軽に記録できるようになるため、残業時間削減につながります。また、電子化により施設内の文書の保管場所が削減できるでしょう。 - 勤怠管理・給与計算システム
出退勤時刻をもとに、自動的に給与が計算されるシステムです。勤怠管理から給与計算までを一気通貫して行えるので、転記などの事務作業の手間がなくなります。 - 利用者の見守りシステム
利用者の居室に設置したカメラやセンサーによって、生体情報やベッドからの転落などの身体の動きを感知します。危険を察知した際には、スタッフに通知が送信されます。夜間などの見回りの負担を軽減し、通知が来ない間は他の業務に集中するなど、スタッフの業務効率化が期待できます。
参考:[介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きVer.2 概要版](https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html)
ICT活用による介護現場へのメリット
介護事業所がICTを活用したときには、以下のようなメリットが生まれると考えられます。
介護記録の事務負担軽減
介護記録などをICT化してパソコン・タブレット・スマートフォンなどで作成することにより、介護スタッフが手書きの書類作成に取られていた事務仕事の時間が短縮される効果が見込まれます。さらにホームヘルパーによる訪問介護の場合は書類作成のために事務所に戻る必要がなくなるため、利用者居宅からの直行直帰が可能となり、働きやすさが向上します。
利用者ケアの負担軽減
見守りセンサーでICTによる利用者の状態を伝達することで、介護スタッフは利用者の居室に頻繁に出向く必要がなくなり、介護スタッフの時間的ロスが少なくなります。また常に利用者の遠隔監視ができることにより、万が一の事故も未然に防げます。
ICT活用による介護現場へのデメリット
ICTを新たに導入することは、介護現場にコストや教育の面で負担が
ICTを新たに導入することは、介護現場にコストや教育の面で負担がかかるというデメリットもあります。
導入コストの負担
ICT機器やソフトウェアを導入するには、購入費用やメンテナンス費用などのコストがかかります。特に小規模な介護事業所では、ICTの導入に対する投資回収期間が長くなる可能性があります。また、ICT機器やソフトウェアは常に最新のものに更新する必要がありますが、そのためには追加のコストが発生します。
教育・研修の必要性
ICT機器やソフトウェアを使いこなすには、介護スタッフに対する教育や研修が必要です。ICTに慣れていないスタッフにとっては、操作方法やトラブル対処などの学習が負担になる場合があります。また、ICTの導入によって業務の流れやルールが変わることもありますが、その変化に対応するためには、組織全体での意識改革やコミュニケーションが必要です。
まとめ
介護現場におけるICTの活用は、介護の担い手不足の問題に対する一つの解決策となり得ます。ICTを活用することで、介護記録の事務負担の軽減や利用者の見守りの効率化などのメリットがあります。しかし、ICTを導入するには、コストや教育などの課題もあります。ICTの導入には、事業所の規模やニーズに応じた適切な選択と計画が必要です。