2024年施行「認知症基本法」が変える現場の常識:特養プロが語る「共生社会」とパーソン・センタード・ケアの実践
📖 介護福祉士対策 2026.08.29

2024年施行「認知症基本法」が変える現場の常識:特養プロが語る「共生社会」とパーソン・センタード・ケアの実践

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2024年施行「認知症基本法」が変える現場の常識:特養プロが語る「共生社会」とパーソン・センタード・ケアの実践

はじめに:保護の対象から「社会の主体」への大転換

2024年1月に施行された「認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)」。これは単なる理念法ではなく、認知症の人を「何もわからない保護されるべき存在」から「社会を共に創る主体」へと位置づけた、介護の歴史を変える大転換です。
「私を抜きに私のことを決めないで(Nothing About Us Without Us)」という当事者のスローガンが、いよいよ国策として現場に落とし込まれる時代となりました。

📚 基礎知識:パーソン・センタード・ケアとBPSD

認知症ケアの根幹となる考え方と症状の分類です。

  • パーソン・センタード・ケア: トム・キットウッドが提唱。「認知症という病気」を見るのではなく、「その人(Person)」を尊重し、本人の視点や感情に寄り添うケアの理念です。
  • 中核症状: 脳の細胞が壊れることで直接起こる症状(記憶障害、見当識障害、実行機能障害など)。誰にでも起こります。
  • BPSD(行動・心理症状): 中核症状をベースに、本人の性格や環境、身体の不調(脱水や便秘)、不適切なケアが絡み合って起こる症状(徘徊、暴言、幻覚など)。環境やケアによって改善・予防が可能です。

Ⅰ. データで見る実態と課題

厚生労働省の推計では、2025年には65歳以上の約5人に1人(約730万人)が認知症になるとされています。さらに、若年性認知症の人も約3.5万人存在し、認知症は「誰にでも起こりうる身近な事象」となりました。
しかし現場の課題として、社会全体に根付く「スティグマ(偏見・差別)」があります。内閣府の調査では、「認知症になると何もできなくなる」と思い込んでいる国民が依然として多く、これが当事者の社会参加を阻む最大の障壁となっています。

Ⅱ. 【体験談】特養プロが学んだ「パーソン・センタード・ケア」の本質

特養に入所されたHさん(70代女性・アルツハイマー型認知症)。入所当初は「ここは私の家じゃない!」と帰宅願望が強く、スタッフを叩くなどの激しいBPSD(周辺症状)が見られました。
以前の私たちなら「危険だから」と病棟に鍵をかけ、精神安定剤の処方を医師に依頼していたかもしれません。しかし、基本法の理念である「その人の視点に立つ(パーソン・センタード・ケア)」を実践するため、Hさんの人生史を徹底的に調べました。彼女は長年、地元の保育園で給食を作っていたベテラン調理員だったのです。

私たちは、安全を確保した上で、おやつの時間に使う野菜の皮剥きや食器拭きをHさんにお願いしました。「あら、包丁の切れ味が悪わね」と笑う彼女の顔は、施設の「利用者」ではなく、誇り高き「調理員」の顔でした。役割(出番)を持ったことで、HさんのBPSDは嘘のように消失したのです。「問題行動」は、私たちが彼らから「役割」を奪った結果生み出されていたのだと猛省しました。

Ⅲ. 今後の予想と「最悪のシナリオ」

認知症の人を「管理・隔離」するだけの施設は、人権意識の高まりとともに社会から激しく糾弾されます。身体拘束や不適切な向精神薬の使用は法的に厳しく罰せられ、共生社会の理念に対応できない事業所は存続できなくなります。

Ⅳ. 改善案:AI(ICT)と専門職の「協働」

【AI(ICT)化で任せられる業務】

  • BPSDの予兆検知とトリガー分析: AIカメラやバイタルセンサーが、「どのような時間帯に、誰が近づくと、どのような行動が起きるか」を自動分析。人間の目では気づかない「不穏になる直前の微細な変化」を検知し、スタッフへ先回りして通知します。
  • VR(仮想現実)による「認知症体験」研修: 認知症の人が見ている世界(視空間失認など)をスタッフや家族がVRで擬似体験することで、言葉での説明よりも遥かに深い共感と理解(スティグマの払拭)を促します。

【専門職(人間)に求められること】

  • 本人の「強み(残存機能)」にフォーカスする力: 「できないこと」を数える(欠損モデル)のではなく、「まだできること・得意なこと」を見つけ出し、それを生活の中で発揮できる環境をデザインする力。
  • 意思決定支援(Supported Decision Making): 「認知症だからわからないだろう」と家族や職員が勝手に決めるのではなく、写真や簡単な言葉を使い、本人の意思を最大限に引き出して尊重する高度なコミュニケーション能力。

まとめ:試験対策ポイント

試験では「認知症基本法の理念(共生社会の実現、本人の意思の尊重)」や、「パーソン・センタード・ケア(トム・キットウッド提唱)」が確実に問われます。また、認知症サポーター養成講座などの「地域における理解促進」の取り組みも頻出です。

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大田 航 / wtr

この記事の監修者

大田 航(おおた わたる) / wtr

現場経験15年 / 介護福祉士・特定業務従事者(喀痰吸引、胃ろう) 等

特養、デイサービス、有料老人ホーム等の現場で15年。DXを主軸とした経験を基に、介護士が行う事務作業をAIに任せ、ケアに専念できるよう日々奮闘しています。利用者様や、医療・福祉の現場で働く人が皆幸せになれるよう、介護DX・ICT化のきっかけ作りをサポートします。