導入
高齢者や足腰の弱い方が住み慣れた自宅で暮らし続けるために、転倒を防止し自立歩行を支える「手すり」の設置は最もポピュラーかつ有効なバリアフリー改修です。しかし、せっかく手すりを設置しても、位置や高さが利用者の体格・状態に合っていなければ、かえって歩きにくくなったり事故を招いたりすることもあります。本コラムでは、廊下、階段、トイレ、浴室それぞれの基本的な手すりの設置基準と高さの決め方を解説します。
1. 廊下・階段(移動動作のための手すり)
廊下や動線上に取り付ける手すりは、基本的に「横手すり」です。
- 設置高さの基準: 床面から「75〜85cm」が標準です。これは、立位時に腕を自然に下ろした際の手首の関節(大転子と呼ばれる大腿骨外側の突起)付近の高さに相当します。
- 太さの基準: しっかりと握り込める直径「30〜40mm」程度の丸木タイプが最適です。
2. トイレ(立ち座り・姿勢保持のための手すり)
トイレでは、立ち上がり、座る、そして用便中の姿勢維持の3つの動作が必要になります。
- L字型手すりの設置: 最も有効な形状は、縦と横の手すりを組み合わせた「L字型手すり」を便器の側壁に取り付ける方法です。
- 縦手すりの役割: 便器の先端から前方に「15〜25cm」の位置に垂直に配置し、立ち上がる際の手すり引き上げ動作を支えます。
- 横手すりの役割: 便座のシート面から上方に「22〜30cm(床から70〜75cm程度)」の位置に水平に配置し、座る際や座位保持の際に腕で荷重を支えます。
3. 浴室(温度変化・濡れた床での安全確保)
浴室は水や石鹸で非常に滑りやすく、また浴槽をまたぐという大きな高低差のある動作が伴うため、手すりの役割が重大です。
- 出入り用: 浴室の出入り口付近に「縦手すり」を設置し、扉の開閉や段差の移動の際のバランス保持を助けます。
- 浴槽またぎ用: 浴槽の縁から上方に「80〜85cm(洗い場床面から)」の位置に、跨ぎ動作時に身体を安定させる「縦手すり(浴槽の出入り用)」と「横手すり(浴槽内の立ち上がり用)」を適切に配置します。