💡 成長を引き出す:
ダメ出しをしない「承認と強み」を生かす指導法
「ここがダメだ」「もっとこうしろ」という減点方式の指導は、スタッフの意欲を削ぎ、萎縮させてしまいます。特に介護のように、人の感情と向き合う仕事では、職員の精神的な安定と主体性が重要です。
効果的な指導者は、できていない部分を探すのではなく、「できているところ」を意図的に見つけ、それを土台に改善を促す指導法、すなわち承認(アサーション)と強みを生かす指導を実践します。この方法こそが、スタッフの自信と成長意欲を育みます。
1. ダメ出し指導(減点)とプラス指導(加点)の違い
指導者が無意識に使っている言葉や視点が、スタッフの成長を加速させるか、停滞させるかを決定づけます。減点方式は、指導者やスタッフ自身が設定した高い理想や思い込みとのギャップに焦点を当てるため、スタッフに過度な心理的プレッシャーを与えがちです。
2. ポジティブ・フィードバックの具体的な3ステップ
単に「よかったよ」と褒めるだけでは不十分です。行動の改善につながる「質の高い」承認には、具体的な手順が必要です。
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Step 1: 事実を具体的に伝える(客観視)
「あなたは優しい」といった抽象的な評価ではなく、「今日の声かけでは、利用者さんの目線の高さまでしゃがんで話していましたね」のように、何ができていたかを事実として具体的に伝えます。
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Step 2: それがどういう効果を生んだか伝える(結果の評価)
その行動が、利用者やチームにどのような良い影響をもたらしたかを伝えます。「その姿勢のおかげで、利用者さんは安心したようで、スムーズに会話が成立していましたよ。」
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Step 3: 改善点を「質問」や「依頼」で促す(未来志向)
ネガティブな指摘を避け、未来の行動に対する期待や、自発的な改善を促します。「その良い姿勢を保ちつつ、次にもし時間に余裕があれば、もう一歩だけ車椅子に近づいてみたらどうなりそうでしょう?」
3. 指導場面別:ダメ出し発言とプラス指導の具体例
日常の指導場面で、言葉遣い一つで相手の受け止め方が大きく変わります。
場面:移乗介助で時間がかかってしまったスタッフへ
【NG例:ダメ出し指導】
「〇〇さん、移乗に時間かけすぎ!利用者さんを待たせているじゃない。もっとテキパキやらないとダメだよ。」
*→ 結果:* スピードだけを気にし、安全確認がおろそかになったり、焦りから利用者への声かけが雑になる。また、「自分は要領が悪い」という思い込みが強化される。
【OK例:プラス思考の指導】
「A様の移乗、慎重に、一つ一つの手順を丁寧に行っているのが伝わりました。安全を第一に考えているのは素晴らしいですね。(承認)
この丁寧さを維持したまま、どこか無駄な動きがないか、一緒に確認してみませんか?次に短縮できるのはどの動作**だと思いますか?(質問・改善促し)」
*→ 結果:* 丁寧さという強みを活かしつつ、無駄を削るという建設的な行動につながる。
場面:職員間の報告・連絡が不十分だったスタッフへ
【NG例:ダメ出し指導】
「あの報告漏れはありえないよ。チームワークを乱さないで。報連相ができないと、仕事にならないぞ。」
*→ 結果:* 失敗を隠そうとしたり、指導者への報告を躊躇するようになる。理想のチーム職員像からかけ離れていると自己評価し、自信を失う。
【OK例:プラス思考の指導】
「急変時、すぐに対応してくれて助かりました。あの時の冷静な判断力は素晴らしいです。(承認)
今回の件は、初期対応が完璧だっただけに、記録がもう少し詳しければ、夜勤者がもっとスムーズに対応できたと思います。あなたの的確な対応をチーム全体で活かすために、次はどんな情報から記録しようか、一緒に確認させてください。(強みを生かした提案)」
*→ 結果:* 自分の能力は認められた上で、報告の重要性を理解し、建設的に改善に取り組める。
4. ポジティブ指導を徹底するための心構え
指導者自身が指導のスタイルを変えるために、常に以下の点を確認しましょう。
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「できていないこと」の裏側を見る:
例えば、「時間がかかりすぎている」というダメ出しの裏には、「一つひとつの作業を丁寧にやっている」という強みがあるかもしれません。その「丁寧さ」をまず承認します。
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失敗を「成功へのデータ」と捉える:
「失敗」を「望ましくない結果」と捉え、「そこから何を学べるか」をコーチングの質問で引き出す姿勢を持つことが、ポジティブな指導の基本です。
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比率を意識する:
ポジティブなフィードバックとネガティブな指摘の比率は3:1や5:1を意識しましょう。肯定的な言葉が圧倒的に多い環境では、スタッフは安心して成長できます。
【まとめ】指導者の成長】
「ダメ出しをしない」指導法は、決して甘やかすことではありません。それは、スタッフの「自尊心」と「意欲」という最も大切な資源を損なわないよう配慮しながら、確実な成長を支援するプロの技術です。
指導者自身がスタッフの強みを見つけ出す名人になることで、チーム全体のエンゲージメントとサービスの質が飛躍的に向上するでしょう。