💡 人材育成の二刀流:
新人・中途採用者指導における
ティーチングとコーチング
介護・福祉の現場では、毎年新人が入職し、即戦力として期待される中途採用者も増えています。効果的に人材を育成し、サービスの質を維持・向上させるには、指導方法を状況に応じて使い分けることが不可欠です。
指導方法の二大原則である「ティーチング(教える)」と「コーチング(引き出す)」の使い分けを理解し、新人・中途採用者それぞれの成長を支援する方法を深く掘り下げます。
1. ティーチングとコーチングの決定的な違い
ティーチングとコーチングは、目標は同じ「成長」ですが、アプローチと指導者の役割が全く異なります。
【重要な視点】 どちらが優れているではなく、「相手の状態」と「教える内容」に応じて適切な指導法を選択することが重要です。
2. 新人指導:最初はティーチング、段階的にコーチングへ
知識も経験もない新人の初期指導では、安全性の確保と基礎の定着が最優先となるため、ティーチングからスタートし、徐々にコーチングへと移行させます。
新人指導のフェーズと実践例
① 初期フェーズ(導入・基礎)
手法: ティーチング中心
目的: 利用者さんの安全を確保するための「型」を覚える。
実践例: 「移乗介助は、必ず声をかけてから、3つの手順でこの角度で行ってください。」と、正解と理由を明確に指導し、反復させる。自己判断はさせない。
② 応用フェーズ(慣れ・実践)
手法: コーチングへの移行
目的: 「なぜこの手順でやるのか」という理由を深く理解し、応用力を育む。
実践例: 「今日のA様の食事介助、いつものやり方と少し違ったけれど、どんな意図があった?」「その行動の結果、A様はどう反応した?」と問いかけ、自ら振り返らせる。
3. 中途採用者指導:コーチングを基本にティーチングで補完
中途採用者は前職の経験やスキルがあるため、プライドを尊重しつつ、当施設のローカルルールや理念への適応を促すことが重要です。指導はコーチングを基本とし、必要な部分だけティーチングで補います。
中途採用者指導のポイントと実践例
① 基本は傾聴と承認(コーチング)
目的: これまでの経験を承認し、施設への心理的な安心感を持ってもらう。
実践例: 「前職では、認知症の方の誘導はどのようにされていましたか?」「そのやり方は素晴らしいですね。当施設では記録のルールが少し違うのですが、その点について少し説明させてもらえますか?」と、相手の知識を尊重した上で、違いをティーチングする。
② 課題解決の促進(コーチング)
目的: 新しい環境での自力での問題解決能力を高める。
実践例: 業務でミスが発生した場合、すぐに答えを教えず、「このミスを防ぐために、あなたならまず何を改善しますか?」と問いかけ、主体的な行動計画を引き出す。
4. ティーチングとコーチングを使い分ける判断基準
指導の途中で、どちらの手法を使うか迷った場合の判断基準は以下の通りです。
- 【ティーチングが必要な場合】
・安全に関わる行為(例:危険な機械の操作、感染症対策)。
・法令や施設の手順が厳密に定められている場合(例:特定行為の実施、記録)。
・対象者が知識不足を自覚しており、早く答えを知りたいと求めている場合。
- 【コーチングが必要な場合】
・正解が一つではない対人援助の場面(例:利用者さんの不穏対応)。
・対象者の意欲や主体性を高めたい場合。
・対象者が経験を積み、次のステップへ進むための内省を促したい場合。
効果的な指導者は、ティーチングとコーチングという二つのツールを相手の成長段階に応じて使い分けます。
新人のうちは、安全を最優先するためにティーチングで基礎を固め、経験者や慣れてきたスタッフには、自律性を尊重し、質問で能力を引き出すコーチングで主体的な成長を促していきましょう。