介護業界では人材不足が深刻な問題となっています。介護職員の離職率は全産業の平均を下回っていますが、不本意な離職を減らすことが人材定着に向けての課題です。この記事では、人材定着に向けて組織において検討が必要な要素や、実際に取り組んでいる事業者の事例を紹介します。
介護職の離職の実態
介護労働安定センターが行った「令和元年度介護労働実態調査」によると、訪問介護員、介護職員(2職種計)の1年間(平成30年10月1日から令和元年9月30日まで)における離職率は15.4%となっています。過去15年間の推移を見てみると、平成18年度は20.3%と高い数値を示していましたが、年々減少傾向にあります。一方、厚生労働省が行った「令和元年雇用動向調査」によると、全産業の平均離職率は15.6%となっています。実は現在介護職の離職率は全産業の平均をわずかに下回っており、「介護職は離職率が高い」という多くの方が持つイメージほど高くはないのです。
介護関係の仕事の離職理由としては、先述の「令和元年度介護労働実態調査」によると、「職場の人間関係に問題があったため(23.2%)」「結婚・出産・妊娠・育児のため(20.4%)」「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(17.4%)」「自分の将来の見込みが立たなかったため(16.4%)」「他に良い仕事・職場があったため(16.0%)」「収入が少なかったため(15.5%)」という理由が上位に挙がっています。
人材定着に向けた課題の整理
一般的に、人材定着について考える際、離職率が高いことに課題意識を持たれる方が多いと思います。しかし、離職率の高さは、他の法人・事業所に転職する能力やスキルを備えている人材の多さ、業界内の人材流動性の高さを表す場合もあるため、離職率の数値自体が一概に問題とは言えません。人材定着に向けては、離職率の数値を減らすことというよりは、不本意な離職を避け、人が辞めてもまた人材を獲得出来るような、魅力的な職場を作ることが大切でしょう。
それでは、人材定着に向けて事業所が向き合う課題にはどのようなものがあるのでしょうか。先述の実態調査からも「人間関係」や「給与」、「事業所の理念」など様々な離職理由があることが伺えます。以下に、人材定着に向けて組織において検討が必要な要素を【事業所の理念・運営方針】【人事制度】【仕事に対するモチベーション・やりがい】【人間関係】の4つの項目に分けて整理しています。皆様の事業所でも既に検討されていたり取組が行われている項目もあるかもしれませんが、要素ごとに、どのような取組が出来ているか、不本意な離職を減らすにあたって改善の余地はないか等、現状を振り返り整理することの一助になるかと思います。もちろんそれぞれの事業所の特徴や状況によって異なりますが、まずはどの課題に優先して向き合うべきか明確にすることが、人材定着に関する取組の第一歩となるでしょう。
【事業所の理念・運営方針】
- 事業所の存在意義や目指すべき方向性を明確にする
- 事業所の理念やビジョンを職員に周知し、共有する
- 事業所の理念やビジョンに沿った経営戦略や事業計画を策定し、実行する
- 事業所の理念やビジョンに基づいた人材育成や評価制度を整備する
- 事業所の理念やビジョンに共感し、貢献できる人材を採用する
【人事制度】
- 職務内容や責任範囲、昇進の条件などを明確にした等級制度を設ける
- 等級や評価に応じた
- 能力や評価に応じた昇給や賞与を支給する
- 資格取得や研修参加などのスキルアップに対する手当や補助を用意する
【仕事に対するモチベーション・やりがい】
- 自分の仕事の目的や意義を理解し、利用者や家族の声に耳を傾ける
- 自分の仕事の成果や貢献を可視化し、フィードバックや称賛を受ける
- 自分の仕事の改善や創意工夫に挑戦し、チャレンジや成長を感じる
- 自分の仕事に対する自信や誇りを持ち、専門性やプロ意識を高める
【人間関係】
- 上司とのコミュニケーションを円滑にし、指導や相談を受けやすくする
- 同僚とのコミュニケーションを活発にし、協力や支援を行いやすくする
- 他職者とのコミュニケーションを密にし、連携や協働を行いやすくする
- 利用者や家族とのコミュニケーションを深め、信頼や親しみを築く
介護職員の定着促進に向けた事例紹介
ここまで、介護職員の定着促進に向けて検討すべき要素を整理しました。次に、実際に介護職員の定着に成功している事業所の事例を紹介します。参考になる取り組みやヒントがあるかもしれません。
【事例1】社会福祉法人 あおぞら会
社会福祉法人あおぞら会は、東京都にある特別養護老人ホームやデイサービスなどを運営する法人です。介護職員の定着率は90%以上と高く、離職率は5%以下と低いという実績を持っています。その秘訣は、以下のような取り組みにあります。
- 事業所の理念やビジョンを職員に周知し、共有する。定期的に理念研修やミーティングを行い、職員の意見や提案を聞く。
- 職員の能力や適性に応じたキャリアプランを作成し、目標や評価を明確にする。資格取得や研修参加などのスキルアップを支援する。
- 職員の仕事の成果や貢献を可視化し、フィードバックや称賛を行う。利用者や家族からの感謝の声や手紙を職員に伝える。
- 職員の仕事の改善や創意工夫に挑戦させる。業務改善の提案や実践の機会を与え、チャレンジや成長を感じさせる。
- 職員の人間関係を良好にする。コミュニケーションや協力を促進するための研修やイベントを開催する。職員の悩みや相談に対応する。
【事例2】株式会社 ひまわり介護サービス
株式会社ひまわり介護サービスは、大阪府にある訪問介護や居宅介護支援などを提供する会社です。介護職員の定着率は80%以上と高く、離職率は10%以下と低いという実績を持っています。その秘訣は、以下のような取り組みにあります。
- 給与や待遇を改善する。能力や評価に応じた昇給や賞与を支給する。資格取得や研修参加などの手当や補助を用意する。
- 働き方を柔軟にする。勤務時間や休日の希望を聞き、調整する。時短勤務や在宅勤務などの制度を導入する。
- 福利厚生を充実させる。健康診断やマッサージなどの健康管理を行う。社員旅行や食事会などのレクリエーションを行う。
- 職場の雰囲気を明るくする。職員同士のコミュニケーションや協力を促す。職員の誕生日や記念日を祝う。
- 職員の声を聞く。アンケートや面談などで職員の意見や要望を聞く。職員の満足度や不満度を測定する。
まとめ
介護職員の定着促進について記事を書いてみました。
この記事が介護職員の定着促進に関心のある方にとって有益な情報になれば幸いです。😊