介護 2024.05.02

介護事故のリスクマネジメントとは?事例と対策を紹介

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介護現場では、利用者や職員の安全を確保するために、リスクマネジメントが必要です。しかし、どのようにリスクマネジメントを実践すればいいのでしょうか?この記事では、介護事故のリスクマネジメントの目的、事例、対策、実践方法などを解説します。

介護事故のリスクマネジメントとは?

介護事故のリスクマネジメントとは、介護現場における事故が起きる危険性を把握・管理し、ルール化することで事故を未然に防ぐ活動を意味します。高齢者の多い介護現場では、事故が起きるリスクが高い傾向にあります。公益財団法人介護労働安定センターの『福祉サービス事故事例集』では、具体的に以下のようなトラブルが挙げられています。

  • ふらつきのある利用者に、後ろから声をかけてしまい転倒
  • 誤嚥のリスクを把握しないまま食事の介助を行い、利用者が激しくむせてしまった
  • 車いすが石にぶつかった衝撃で利用者が転落
  • ソファに深く体を沈めて座っていた利用者が、立ち上がった際によろけて転倒
  • タンスの上段を勢いよく引いたはずみで利用者が転びそうになる
  • 面会者が持参したパンや菓子をのどにつまらせてしまう
  • 別の利用者の薬を間違って飲ませてしまいそうになった
  • おむつの交換時に、利用者がバランスを崩してベッドから転落

事故防止に努めるためにも、事業者はリスクマネジメントを意識する必要があります。今回は、介護現場で起こりやすい具体的な事故事例を紹介しながら対策を解説していきます。システム作りのコツもまとめましたので、リスクマネジメントを強化したい介護事業者は是非ご確認ください。

介護事故のリスクマネジメントの目的

介護事故のリスクマネジメントの目的は、主に以下の3つです。

  1. 利用者の安全・安心を確保する
  2. 高額訴訟から事業所を守る
  3. 現場の介護職員を守る

それでは、一つずつ分かりやすく解説していきます。

利用者の安全・安心を確保する

介護施設で暮らす利用者は、心身機能の低下によって事故につながるリスクが高くなっています。だからこそ、細心の注意を払って介護サービスを提供する必要があります。利用者一人一人の介護における安全の確保を保つことは、リスクマネジメントの大きな目的の一つです。

高額訴訟から事業所を守る

介護現場では、事故が原因で家族から訴訟を起こされるといった事例があります。中には、高額な賠償金の支払いを命じられるケースも見られています。また、訴訟を起こされることで施設の信頼性は崩れ、今後の施設経営にも大きなダメージを与えることになるので、リスクマネジメントによって、訴訟問題への発展を防ぐことが重要です。

現場の介護職員を守る

介護職をしてる方なら分かると思いますが、介護事故は職員のメンタルに大きな影響を与えます。事故を完全に防げないことを理解はしてるものの、目の前で起きた事故に対して自責の念にかられる職員は多くいます。しかし、介護事故の原因は、手すりの不足や適切な福祉用具の不備など、環境面も大きく関わってきます。現場の介護職員を守り安心して働けるためにも、リスクマネジメントは大切であることを理解しておきましょう。

介護事故のリスクマネジメントの実践方法

介護事故のリスクマネジメントを実践するには、以下の4つのステップを踏むことが大切です。

  1. リスクの特定
  2. リスクの分析
  3. リスクの評価
  4. リスクの対策

それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

リスクの特定

リスクの特定とは、介護現場において事故が起きる可能性のある要因を洗い出すことです。リスクの特定には、以下の3つの視点が重要です。

  • 利用者の視点:利用者の状態やニーズ、生活環境などを把握する
  • 職員の視点:職員のスキルや知識、業務内容や負担などを把握する
  • 施設の視点:施設の設備や機器、運営や管理などを把握する

    リスクの分析

    リスクの分析とは、特定したリスクの原因や影響を調べることです。リスクの分析には、以下の2つの方法があります。

    • 定性的分析:リスクの重要度や優先度を主観的に評価する方法
    • 定量的分析:リスクの発生確率や損失額を数値的に評価する方法

    介護現場では、定性的分析が一般的に行われます。定性的分析では、リスクの重要度を以下のように4段階で評価します。

    重要度 発生確率 影響度
    頻繁に発生する 重大な損害が発生する
    時々発生する 中程度の損害が発生する
    稀に発生する 軽微な損害が発生する
    ほとんど発生しない 損害が発生しない

    例えば、利用者の転倒事故は、発生確率が高く、影響度も高いので、重要度は高と判断できます。一方、利用者の補聴器を洗濯してしまう事故は、発生確率が低く、影響度も低いので、重要度は低と判断できます。

    リスクの評価

    リスクの評価とは、分析したリスクの重要度に応じて、対策の優先順位を決めることです。リスクの評価には、以下のような方法があります。

    • リスクマップ:リスクの発生確率と影響度を軸にして、リスクの重要度を視覚的に表す方法
    • リスクマトリックス:リスクの発生確率と影響度を表にして、リスクの重要度を分類する方法

    介護現場では、リスクマップやリスクマトリックスを使って、リスクの評価を行うことができます。以下は、リスクマップの例です。

    “リスクマップの例”

    引用:事故を防ぐ「介護現場のリスクマネジメント」とは? 事例と対策を紹介

    リスクマップでは、右上の赤い部分が最も重要度の高いリスクであり、左下の緑の部分が最も重要度の低いリスクであることがわかります。このように、リスクの評価を行うことで、どのリスクに対して優先的に対策を講じるべきかを判断することができます。

    リスクの対策

    リスクの対策とは、評価したリスクに対して、具体的な予防策や対応策を立てることです。リスクの対策には、以下の4つの方法があります。

    • 回避:リスクが発生しないようにする方法
    • 低減:リスクの発生確率や影響度を低くする方法
    • 移転:リスクの影響を他者に負担させる方法
    • 受容:リスクの発生や影響を受け入れる方法

    介護現場では、回避や低減が主なリスクの対策となります。例えば、利用者の転倒事故を防ぐために、以下のような対策が考えられます。

    • 回避:利用者の歩行能力に応じた適切な介助や福祉用具の使用
    • 低減:床や手すりの滑り止めや照明の工夫、職員の巡回や見守り

    リスクの対策を行う際には、以下の点に注意しましょう。

    • 対策の効果とコストのバランスを考える
    • 対策の実施に必要な人員や資材を確保する
    • 対策の実施方法や責任者を明確にする
    • 対策の実施状況や効果をモニタリングする

    以上が、介護現場でのリスクマネジメントの基本ステップです。リスクマネジメントは、一度行ったら終わりではなく、定期的に見直しや改善を行うことが必要です。事故の発生や再発を防ぐためにも、介護現場でのリスクマネジメントに積極的に取り組みましょう。

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