認知症マフの効果を深掘りする
【第2回】「手の行き場」を作って事故を防ぐ
介護現場において、点滴の自己抜去や弄便(ろうべん)などのトラブルは、スタッフの疲弊だけでなく身体拘束(つなぎ服やミトンの使用)のリスクに直結します。認知症マフは、こうした行動を「禁止」するのではなく、安全な「代替行動」へ置き換えることで事故を防ぎます。
1. なぜ「いじってしまう」のか?
認知症の方は、チューブの違和感や下腹部の不快感を「何か分からない不快なもの」として捉え、無意識に手で取り除こうとします。この「動かしたい手」を無理に止めると、さらなる興奮を招きます。
「注意の転換」という戦略
人間の脳は、より「触り心地が良いもの」や「興味を引くもの」に注意が向きやすい性質があります。カテーテルや衣類よりも魅力的な質感を持つ「マフ」を手に届けることで、脳の関心をトラブルの元からマフへと移します。
2. マフによる具体的な課題解決
【事例:弄便・おむついじりの対策】
不快感から手をおむつに入れてしまう方に対し、マフを渡します。マフの内側に隠された大きなボタンやレースの感触に指先が集中することで、おむつへの関心が薄れます。
【事例:医療器具の自己抜去防止】
点滴や経管栄養のチューブを抜こうとする方の「空いている方の手」にマフを装着します。筒状のマフの中で指先を動かせるため、「手を拘束されている」という不快感を与えずに、器具に手が届くのを物理的・心理的に防ぎます。
3. 代替行動を成功させる「飾りの工夫」
事故防止の効果を高めるには、その方の「手のクセ」に合わせた飾りの選定が重要です。
手の動きに合わせたカスタマイズ:
- 摘まむクセがある方: 小さなビーズや、しっかり縫い付けたボタンを。
- 引っ張るクセがある方: 伸縮性のあるリボンや、丈夫なループを。
- 回す・ねじるクセがある方: 大きめのウッドビーズや、ジッパーを。
※本人が夢中になれる「触感」を提供することが、最高の事故防止になります。